FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年11月9日放送

今回のお客様は津市白山町で『ゲストハウス・イロンゴ』を営む倉田麻里さんです。
『イロンゴ』とは、フィリピンの一部の地域で話されている言葉、民族、文化のことを言います。
まずは、倉田さんがフィリピンと触れるきっかけからお話ししていただきましょう。

学院を卒業してNGOに就職

大学院のときに『国際交流の家』に住んでいて、そこで外国人留学生たちと1年間一緒に過ごして、そのときに自分は外国に住んで仕事をしてみたいと強く思いました。
自分の特技が生かせる仕事はなんだろうと考えたときに、それまで森林ボランティアの団体に関わってきたこともあり、林業の知識を生かして、また社会活動の経験を活かせるだろうと思い、NGOに就職しようと考えました。
駐在員の仕事を探していたところ、NGOの『イカオ・アコ』が駐在員を募集していたので、そこに決めてフィリピンに行ってみようと思いました。
フィリピンは自分にとても合っていました。
人がフレンドリーで、みんな明るいんですよ。
とても前向きで、困ったことがあったとしても、それは神様に与えられた試練。
良いことがあったら、私は恵まれていると感じます。
もともとキリスト教の方が多いので、ポジティブで与えられたものを大切にしようという考え方で生きています。
フィリピンに来て、今までくよくよしていたり悩んでいた自分を乗り越えることができました。
あと、フィリピンは『アジアのラテン』と呼ばれていて、スペインの文化の影響をたくさん受けています。
ラテンダンスとか、情熱的なダンスの文化があって、これも自分にもピッタリ合っていました。

 

ングローブの植林活動のコーディネイトが仕事

まずはじめたのが、マングローブの植林の活動でした。
『イカオ・アコ』という団体自体が1997年から現地でマングローブの植林を行っていたので、現地でそれを引き継いで、植林活動のコーディネートをさせていただきました。
日本人がいくら植林に行こうと思っても、できる期間は来ているときだけでしょう。
でも植林活動は植えるだけでなく、育てていかなくてはならないので、その過程は現地の地域の人たちがやっていくことになります。
そのお手伝いを日本から来たボランティアの人にやってもらう形となります。
日本から来た人たちに気持ちよくボランティア活動をしていただける場を提供する・・・それから+α、その方々が帰ったあとに現地の人たちと育てていく活動を行っていました。
マングローブを植林する場所は海岸線沿いです。
海に浮いているゴミがどんどん海岸線に流れ着いて来て、マングローブにひっかかり、せっかく植えたのに死んでしまうということが何度もありました。
子どもの頃から自然が大好きだったので、環境を守る仕事に付きたいと思っていました。
それがこういう形で関わることができて、本当に良かったなと思っています。

 

学を卒業したら、地元に帰って地元のことをしたいと思っていた

現地のフィリピンの方と結婚して、子どもにも恵まれました。
しかし実家の家が空き家になっているのがずっと気になっていました。
大学を出るときから、いつかはこの地域に戻ってきて、この地域のために活動しようと思う気持ちがあったので、3年前に日本に帰ってきました。
おじいちゃんが残してくれた古民家を改装して、ゲストハウスをはじめました。
かつてフィリピンで、日本人の若い学生さんが研修をするための国際協力研修センターをオープンして、ずっと運営に関わってきたので、ゲストハウスの運営についてもある程度の経験はありました。
今までの経験と人間関係を生かして、こうしたビジネスをはじめました。
外国人のお客さんがほとんどかなと思っていましたが、フタを開けてみたら意外にも日本人のお客さんが多かったので、とても驚いています。
この地域で家族連れの方、ペット連れの方が泊まってくださっています。
行き先は三重県内の大型観光施設や、伊勢に行かれる方が多いですね。

 

まざまな生き方があって、その多様性社会を自分の行動で伝えたい

泊まる、体験する、発見するがゲストハウスのコンセプトです。
日本とフィリピンの2つの国の暮らしや文化をお客様に楽しんでもらっています。
『イロンゴ』の売りの1つが『おくどさん』、かまどを使ったフィリピン料理の体験。
HPを見て料理体験がしたいと泊まりに来てくださる方もいます。
人気なのは鶏肉の丸焼き。
鶏丸々1羽を竹に挿して、炭の飢えで回して焼く料理です。
ワイルドですが、いろいろな香辛料をお腹に詰めて焼くため、外がパリッとしていて、中がジューシーで、とても良い香りがして美味しいです。
体験+温泉もしていまして、近くの『猪の倉温泉』と提携していて、こちらにお泊りのお客様は猪の倉温泉に入っていただけます。
フィリピンのイロンゴの文化と白山町の文化の両方をこちらで伝えていきたいと思っているので、お客様との交流の時間をとても大事にしています。
フィリピンにまだ行ったことのない方が、ここに来てフィリピンの話を聞いて、「次は行ってみようかな」と言ってくれるのがとても嬉しいです。
以前山小屋でアルバイトをしていたときに出会った人が、元小学校の教師だったのですが、教員をやめて夏は山小屋で仕事、冬はスキーのインストラクターをしていて、その合間に世界を旅行していました。
自分の中では大学を卒業したら就職して、ずっと仕事になるから長い休みも取れなくて海外旅行も行けないと思っていたので、そういう生き方もあるんだなと気付かされました。
私もそういった若い子たちに、世界にはいろいろな価値観があって、いろいろな生き方があるんだということを伝えていきたいと思っています。

多様性を認めあって共生していく社会、持続可能な社会を作りたいと思っています。
そのために、いろいろな切り口で関わってもらえるよう、農業や料理、ゲストハウスとか、フィリピンのこととかいろいろな活動をしています。
いろいろな所でいろいろな方と出会って、多くの方に活躍できるような場を提供していきたいと思います。